Viscera_Liver

VISCERA LIVER

肝は、人体の横隔膜の下、腹部の右脇に存在し、「五行」では「」に属し、「」の存在する場所といわれます。
また≪素問・霊蘭秘典論篇≫には、「肝は、将軍の官、謀慮これより出ず(肝者、将軍之官、謀慮出焉)」とあり、「胆は、中正の官、決断これより出ず(胆者、中正之官、決断出焉)」とあります。

たとえば、肝には、「血を蔵す(蔵血)」・「疏泄を主る(主疏泄)」等の「生理機能」があり、その関係する部位は、「体に在りては筋に合す(在体合筋)」・「その華は爪に在り(其華在爪)」・「目に開竅する(開竅於目)」等があります。
また胆には、「決断を主る(主決断)」・「胆汁の貯蔵と排泄(貯蔵和排泄胆汁)」等の「生理機能」があります。

肝と胆には、「表裏:足少陽胆経]・:足厥陰肝経])」の関係があるため、互いの病理変化の影響を受けやすいといわれます。

肝(かん)には、「蔵血」・「主疏泄」といった「生理機能」があり、「在体合筋」・「其華在爪」・「開竅於目」といった関連する部位があります。

肝蔵血 : 肝は、血を蔵すとは、肝が「血液」を「貯蔵」しており、また全身の血液量を調整することで、各組織器官を栄養していることです。
また肝の蔵血機能は、血液量の調節作用を持っており、活動時には、血液は肝から末梢へと送られ、安静時には、血液は肝に戻り蓄えられるといわれます。
たとえば、「肝血虚(かんけっきょ)」となれば、「目の乾燥感・眩暈・目のかすみ・夜盲・肢体のしびれ・爪が白っぽかったり脆い・女性の生理周期が遅くなる・経血量が少ない・或いは生理が止まる」等が現われることがあります。

肝主疏泄 : 肝は、疏泄(そせつ)を主るとは、全身の「気機(気の運動[昇・降・出・入]のこと)」を「調暢(ちょうちょう)」する機能のことです。
また肝の疏泄作用には、主に「調暢気機(ちょうちょうきき)」・「調暢情志(ちょうちょうじょうし)」・「運化促進(うんかそくしん)」があります。

A 「調暢気機」とは、肝の疏泄機能が、気の運動(昇・降・出・入)を暢やかにし、臓腑・経絡等の気機を調節していることです。また肝が気機を調暢することで、血の運行・津液の輸送散布等の代謝は、正常に滞りなく行えます。
たとえば、肝の「疏泄失調」により、「気機鬱結(ききうっけつ)」となれば、「胸脇脹満或いは脹痛・乳脹・下腹部脹痛」等が現われたり、肝気の「昇発過多」により、「気機逆乱(ききぎゃくらん)」となれば、「頭目の脹痛・顔が赤くなる・目の充血・耳鳴・怒りっぽくなる」等が現われることがあります。
また「肝失疏泄、気機不暢」により、「血行不暢」となれば、「腹部腫瘤・子宮筋腫・月経不順・月経痛・閉経」等が現われたり、「水液代謝障害」が生じれば、「むくみ・リンパ節腫脹(痰核)・腹水」等が現われることがあります。

B 「調暢情志」とは、たとえば、情志活動は、主に心(神明を主る)が関係していますが、肝の疏泄機能は、気血を正常に運行することで、精神の安定にも関与しています。
そのため、肝の「疏泄不及(肝気抑鬱)」になれば、「抑うつ感・多く疑ったり善く憂慮する・ため息が多い」等が現われたり、或いは肝の「疏泄太過(肝気興奮)」になれば、「イライラしてすぐに怒る・不眠・多夢・顔が赤くなる・目の充血」等が現われることがありあます。

C 「運化促進」とは、たとえば、水穀(飲食物)の消化吸収は、主に脾胃の機能が関係していますが、その脾胃の運化受納・昇清降濁機能は、肝の疏泄機能が関与しています。
そのため、肝の「疏泄失調」により、「胃気不降(肝胃不和)」となれば、「胃脘部の痞え・ゲップ・悪心・嘔吐・便秘」等が現われたり、或いは「脾気不昇(肝脾不調)」となれば、「腹脹・軟便・下痢」等が現われることがあります。

在体合筋 : 体に在りては筋(筋腱・靱帯)に合すとは、肝が貯蔵している血液によって、筋肉の収縮・弛緩、関節の屈伸等の身体機能が維持されていることです。
たとえば、「肝血虚」により、「筋脈失養(きんみゃくしつよう)」となれば、「四肢のしびれ・筋肉の強張りや引きつり・屈伸がしづらい」等が現われることがあります。

其華在爪 : その華は爪に在りとは、筋の余である爪は、肝血によって栄養されていることです。
たとえば、「肝血虚」により、「爪甲失養(そうこうしつよう)」となれば、「爪が白っぽい・爪が脆い」等が現われることがあります。

開竅於目 : 目に開竅するとは、肝は目に通じて、肝血によって目の働きを維持しており、また肝の病変が目に反映しやすいことです。
たとえば、「肝血虚」により、「目竅失養(もくきょうしつよう)」となれば、「目の乾燥感・目のかすみ・視力減退・夜盲」等が現われたり、また「肝火上炎(かんかじょうえん)」となれば、「目の充血・腫脹・疼痛」等が現われることがあります。

胆(たん)には、「主決断」・「貯蔵和排泄胆汁」といった「生理機能」があります。

胆主決断 : 胆は、決断を主るとは、胆に物事の決断や判断に関わる働きがあるということです。
たとえば、「胆虚気怯(たんきょききょう)」となれば、「情緒が不安定・不眠・多夢・驚きやすく目覚めやすい」等が現われことがあるます。

貯蔵和排泄胆汁 : 胆は、胆汁の貯蔵と排泄機能を持つため、胆汁を消化管に排出することで、水穀の消化を助けています。また胆汁は、肝の余気により生じ、また胆汁の貯蔵と排泄の調節は、肝の疏泄作用が関わっています。
たとえば、「肝失疏泄(かんしつそせつ)」により、「胆汁上溢(たんじゅうじょういつ)」となれば、「口苦」が現われたり、「胆汁外溢(たんじゅうがいいつ)」となれば、「黄疸(目が黄色い・皮膚が黄色い・尿が黄色い)」が現われたりします。