Viscera_Kidney

VISCERA KIDNEY

腎は、人体の腰部の辺りの腰椎の両側位置し、左右に1つずつ存在して、「五行」では「」に属し、「」の存在する場所といわれます。
腎は、先天的に父母から受け継いだ「先天の精(先天之精)」を貯蔵し、その精は、臓腑の陰陽の根本になり、生命の本源でもあるので、腎は、「先天の本(先天之本)」とも呼ばれます。
また≪素問・霊蘭秘典論篇≫には、「腎は、作強の宮、伎巧これより出ず(腎者、作強之官、伎巧出焉)」とあり、「膀胱は、州都の官、津液これを蔵し、気化させ則ち出すことを能す(膀胱者、州都之官、津液蔵焉、気化則能出矣)」とあります。

腎には、「精を蔵す(蔵精)」・「水液を主る(主水液)」・「納気を主る(主納気)」等の「生理機能」があり、その関係する部位は、「体に在りては骨に合す(在体合骨)」・「その華は髪に在り(其華在髪)」・「耳と二陰に開竅する(開竅於耳与二陰)」等があります。
膀胱には、「貯尿排泄を主る(主貯尿排泄)」等の「生理機能」があります。

腎と膀胱には、「表裏:足太陽膀胱経]・:足少陰腎経])」の関係があるため、互いの病理変化の影響を受けやすいといわれます。

腎(じん)には、「蔵精」・「主水液」・「主納気」といった「生理機能」があり、「在体合骨」・「其華在髪」・「開竅於耳与二陰」といった関連する部位があります。

腎蔵精 : 腎は、精を蔵すとは、先天的に両親から受け継ぐ「(先天の精)」や後天的に脾胃の運化作用(消化吸収)により得られた「(後天の精)」を腎は「貯蔵」し、また流失しないように「封蔵(ふうぞう)」していることです。
またその腎に蔵している精を「腎中の精気」ともいいます。

A 「生長、発育、生殖を主る」とは、腎は、精を蔵することで、人体の「生長発育生殖活動」に大きく関わるということです。
たとえば、人体が青年期になれば、腎精が盛んとなり、生殖の精である「天癸(てんき)」が産生されます。
この天癸(性ホルモン)により、男性(平均16歳)は、射精(精通)が可能になったり、女性(平均14歳)は、月経が発来し妊娠が可能になります。
また中年期から老年期になれば、天癸の枯渇が始まり、いずれ生殖能力を失います。
そのため、「腎精不足(じんせいふそく)」となり、人体の生長・発育・生殖機能の促進作用が失われれば、「小児五遅五軟(小児の発育不良)・成人早衰(早老)・性欲減退・男子精子減少・婦女の経量減少・或いは生理が止まる・或いは不妊症」等の症状が現われることがあります。

B 「腎中の精気」は、人体における陰陽の根本である「腎陰」・「腎陽」の基礎となるといわれます。
たとえば、「腎陽(元陽・真陽・真火・或いは命門の火)」は、人体の臓腑・各組織器官を推動・温煦する作用であり、人体における「陽気の根源」といわれ、また「腎陰(元陰・真陰・真水)」は、人体の臓腑・各組織器官を滋養・濡潤する物質であり、人体における「陰液の根源」といわれます。
たとえば、「腎陽虚(じんようきょ)」となれば、「腰や膝の冷痛・精神疲憊・畏寒(寒がり)・四肢が冷える・陽痿(インポテンツ)・子宮が冷える・不妊症・舌質淡」等の症状が現われたり、「腎陰虚(じんいんきょ)」となれば、「腰や膝が軟弱・五心煩熱(心胸部や手足の裏がほてって煩わしい)・顴紅(頬の辺りがほてる)・午後潮熱(午後に発熱する)・陽強・遺精・舌質紅・舌苔少」等の症状が現われることがあります。

また腎陰・腎陽は、相互制約・相互依存の関係にあり、動態的な平衡を維持していますが、この腎の陰陽の平衡が崩れれば、「陰陽」の「偏盛」或いは「偏衰」といった病理的変化が生じます。
たとえば、腎中精気の不足により、腎陰虚となれば、陽気の根源が不足し、腎陽虚が生じることがあり(陰損及陽[陰損が陽に及ぶ])、或いは腎陽虚となれば、陰精を化生できず、腎陰虚が生じることもあります(陽損及陰[陽損が陰に及ぶ])。
これらの腎の「陰損及陰」・「陽損及陰」から、腎の「陰陽両虚(いんようりょうきょ)」となることもあります。

また各臓腑の陰陽失調が長期化し、その病が腎に及べば、腎の陰陽失調を引き起こすことがあり、これを「久病及腎(久病腎に及ぶ)」といいます。

腎主水液 : 腎、は水液を主るとは、腎中の精気の「蒸騰気化(気化・推動・蒸騰・固摂)」によって、「全身」の「水液代謝(吸収・輸布・排泄)」を「調節」していることです。
また水液代謝は、腎以外に「脾・肺・三焦」等の臓腑も関係していますが、脾・肺等の水液の気化は、すべて腎の蒸騰気化に支配されています。

A 腎は、「気化・推動作用」により、不用な水液(濁)を尿に化生し、体外へ排泄しており、その機能を「(かい)」と概括しています。

B 腎は、「蒸騰・固摂作用」により、有用な水液(清)を再生し、肺に上輸したり、また必要な水液を貯留しており、その機能を「(ごう)」と概括しています。

たとえば、腎の「蒸騰気化(じょうとうきか)」が失調し、「気化不利(きかふり:闔多開少)」となれば、「小便がしづらい・むくみ」等の症状が現われ、「腎気不固(じんきふこ:開多闔少)」となれば、「小便が透明で多い・頻尿」等の症状が現われることがあります。

腎主納気 : 腎は、納気を主るとは、肺の生理機能(呼吸・粛降作用)により吸入され下降してきた「自然界の清気」を納めることでづ。これを「摂納(せつのう)」ともいいます。
また「肺主気、腎主納気(肺は気を主り、腎は納気を主る)」のため、肺と腎の生理機能の連係が正常であれば、呼吸活動は正常に行われます。
そのため、もし「腎気虚衰」により、「腎不納気」となれば、「呼多吸少(こたきゅうしょう:吸気性の呼吸困難)・息切れ・気喘」等の症状が現われることがあります。

在体合骨 : 体に在りては骨と合すとは、腎が蔵す精から「」が生じ、髄は骨の本になり、また髄によって骨は滋養されていることです。骨の余は、「」ともいわれます。

また精から髄が生じ(生髄)、その髄が集まると「」になるといわれ、そのため、「脳は髄海たり(脳為髄海)」といいます。
たとえば、「腎精不足(じんせいふそく)」により、「骨髄不充、骨失所養(こつずいふじゅう、こつしつしょよう)」となれば、「骨格痿弱(こっかくいじゃく)・下肢が軟弱で萎縮する・歯が動揺する・或いは歯が抜ける」等の症状が現われることがあります。
また「髄海不足(ずいかいふそく)」となれば、「頭暈(頭がくらくらする)・頭部の空痛・耳鳴耳聾・健忘・恍惚・或いは痴呆」等の症状が現われることがあります。

其華在髪 : その華は髪に在りとは、腎精は血に転化し、また血の余は、「」であるため、腎精が充足していれば、髪は潤って盛んであります。
たとえば、「精血不足(せいけつふそく)」となれば、「白髪・脱髪」等が現われやすくなります。

開竅於耳与二陰 : 耳と二陰に開竅するとは、腎は耳と二陰に通じて働きを維持をしているということです。
また聴覚は、腎中の精気と関係が深く、髄海は、腎中の精気によって養われています。
たとえば、「腎気・腎精不足」により「耳竅失養(じきょうしつよう)」或いは「髄海失養(ずいかいしつよう)」となれば、「耳鳴・耳聾」等の症状が現われることがあります。

A「二陰」とは、「前陰(外生殖器・排尿器官)」と「後陰(肛門)」のことであり、これらは腎の機能の支配を受けています。
たとえば、「腎虚(腎気虚・腎陽虚・腎陰虚・腎精虚等)」により、「二便失司(にべんしつし)」となれば、小便の異常である「頻尿・遺尿・尿量減少・尿閉」等の症状が現われたり、大便の異常である「便秘・下痢・慢性下痢・滑脱(かつだつ)」等の症状が現われることがあります。また生殖機能の異常である「月経病・帯下病・不妊症・陽萎(インポテンツ)・遺精」等の症状が現われることがあります。

膀胱(ぼうこう)には、「主貯尿排泄」といった「生理機能」があります。

膀胱主貯尿排尿 : 膀胱は、貯尿排尿を主るとは、膀胱の気化作用により、尿を貯蔵し排泄することです。また膀胱の機能は、腎の蒸騰気化作用の支配を受けています。
たとえば、膀胱の気化失調となれば、「小便が出にくい・尿閉・頻尿・排尿痛・遺尿」等の症状が現われることがあります。