Viscera_Heart

VISCERA HEART

心は、人体の胸部に位置し、横隔膜の上、両肺の間に存在し、「五行」では「」に属し、「」の存在する場所といわれます。
また≪素問・霊蘭秘典論篇≫には、「心は、君主の官なり、神明これより出ず(心者、君主之官也。神明出焉)」とあり、「小腸は、受盛の官、化物これより出ず(小腸者、受盛之官、化物出焉)」とあります。

たとえば、心には、「血脈を主る(主血脈)」・「神を蔵す(蔵神)」等の「生理機能」があり、その関係する部位には、「体に在りては脈に合す(在体合脈)」・「その華は面に在り(其華在面)」・「舌に開竅する(開竅於舌)」等があります。
また小腸には、「泌別清濁を主る(主泌別清濁)」・「受盛化物を主る(主受盛化物)」等の「生理機能」があります。

心と小腸には、「表裏:手太陽小腸経]・:手少陰心経])」の関係があるため、互いの病理変化の影響を受けやすいといわれます。

心(しん)には、「主血脈」・「蔵神」といった「生理機能」があり、「在体合脈」「其華在面」・「開竅於舌」といった関連する部位があります。

心主血脈 : 心は、血脈を主るとは、心が全身の「血脈(脈管)」を「管理」し、「血液」を「循環」させる機能のことです。
また血脈を主るという機能は、主に「心気」の「拍動」によって行なわれています。そのため、心気が旺盛であれば、脈管中の血液は正常に運行されるので、臓腑・組織器官・四肢百骸等は血液によって栄養され、それぞれの生理機能は、維持されます。
たとえば、「心気不足、血液運行無力(しんきふそく、けつえきうんこうむりょく)」となれば、「心悸・顔色に艶がない・脈細弱無力」等が現われたり、或いは「気血瘀滞、血脈受阻(きけつおたい、けつみゃくじゅそ)」となれば、「顔色が黒っぽい・唇や舌が青紫色になる・心胸部の疼痛・脈結・代・促・渋」等が現われることがあります。

心蔵神 : 心は、神を蔵すとは、人体の精神活動(精神・意識・思惟活動)を統括する「心神)」を「」することであり、この神を蔵すは、「心主神明(心は神明を主る)」・「心主神志(心は神志を主る)」ともいわれます。
また「神」には、「広義」の「神」と、「狭義」の「神」があり、たとえば、人体の生命活動における形象・顔色・眼光・言語・応答・肢体の運動等の外的な反映は、広義の神といわれ、人体の精神・意識・思惟活動等は、狭義の神といわれます。その狭義の神を蔵するのが、心といわれ、また神志は、血液によって養われ、心の血脈を主る機能によっても維持されています。
たとえば、「心主神志」が「正常」であれば、精神・意識・思惟活動は、安定して落ち着いていますが、もし「神志異常(しんしいじょう)」が生じれば、「不眠・多夢・情緒不安定・甚だしければ譫狂(うわごと・発狂)・或いは反応が遅純になる・精神活動が不活発」等が現われたり、重症ならば、「意識昏迷・不省人事」等が現われることがあります。

在体合脈 : 体に在りては脈に合すとは、全身の血脈(脈管)は、全て心に属するということです。

其華在面 : その華は面に在りとは、頭面部に血脈が集中することから、心の機能が頭面部に反映することです。そのため、顔色の色彩や光沢の変化から心の機能が把握することができ、もし心気が旺盛であれば、血脈は充たされるので、顔面部は紅く潤って艶があります。
しかし、「心気不足(しんきふそく)」となれば、「顔色が白っぽい」、「血虚(けっきょ)」となれば、「顔色に艶がない」、また「血瘀(けつお)」になれば、「顔色が青紫色」になったりします。

開竅於舌 : 舌に開竅するとは、心は舌に通じて働きを維持をしているということです。
また舌は、「心の苗」ともいわれ、その機能は、味覚の識別と言語の発声であり、もし心の機能に異常があれば、味覚の変化や言語の障害が現われることがあります。
そのため、舌の状態から心の機能を把握することができ、たとえば、舌質の色彩や光沢から「心主血脈」の状態を診察することができます。
もし「心陽不足(しんようふそく)」となれば、「舌質淡白・胖・嫩」となったり、「心血不足(しんけつふそく)」となれば、「舌質淡白」となることがあります。
また「心火上炎(しんかじょうえん)」となれば、「舌質紅・或いは舌瘡」となったり、「心脈瘀阻(しんみゃくおそ)」となれば、「舌質暗紫・瘀点瘀斑」となったり、「心主神志」に「異常」が生じれば、「舌強・舌巻・語謇(言葉が出にくい)或いは失語」等の症状が現われることがあります。

小腸(しょうちょう)には、「主泌別清濁」・「主受盛化物」といった「生理機能」があります。

小腸主泌別清濁 : 小腸は、泌別清濁を主るとは、水穀を「(精微物質)」と「(食物残渣)」に分け、各臓腑(脾・大腸・膀胱等)に送ることです。
また「」とは、分泌であり、「」とは、分けることであるため、小腸は、水穀の精微と食物の残渣を分けたり、或いは水穀の精微を吸収し、食物の残渣を大腸に送ったり、また水液の吸収を行なう機能があるとされます。
たとえば、「主泌別清濁」が「正常」であれば、大小便は調っているが、もし「異常」が生じれば、「大便溏薄(軟便)・小便短少」になることがあります。
そのため、「泄瀉」に対しては、「分利小便(ぶんりしょうべん)」を行ない、大便を硬くする治療法があります。これは、小腸の泌別清濁の機能を調節し、利尿によって、大便の中の水分量を調節する方法です。

小腸主受盛化物 : 小腸は、受盛化物を主るとは、小腸は胃から送られてきた水穀(初期消化された水穀)を受けて、また更に消化することです。
この「受盛」とは、受け取るとか器に盛るという意味があり、「化物」とは、変化・消化・化生という意味があります。
また小腸は、受盛化物・泌別清濁の機能によって、水穀の化生に対して重要な役割を持ちますが、実際には、脾胃の昇清・降濁の機能が中心的な役割を持っています。